労働力不足が一層深刻化するタイ

エコアズ・ウィークリー <2022年2月1日号>

おはようございます、小野です。

少子高齢化による人手不足がうたわれて久しい日本ですが、日本同様に
もともと労働力不足が不安視されてきたタイ、今後状況はより深刻化していきそうです。

今回はタイの労働力不足に関し、下記3点にフォーカスし検証していきたいと思います。
1.少子高齢化による長期的な労働力の減少
2.コロナ禍での出稼ぎ外国人労働者の大量帰国
3.観光業の人材確保難

1.少子高齢化による長期的な労働力の減少
1970年に120万人だったタイの年間出生数は、2020年に初めて60万人を下回りました
(参考までに日本の2020年の数値は84万人)。
タイの合計特殊出生率は1.51(日本は1.36)、バンコクのみにフォーカスすると
数値は0.8未満とも言われています(東京は1.15)。
コロナ禍による経済不安などから、タイの出生数の減少はさらに加速すると予測されています。
タイの人口ボーナス期は2015年に終わっており、人材不足は慢性的な問題として今後解決
されることはなく、むしろますます深刻なものとなっていきます。

2.コロナ禍での出稼ぎ外国人労働者の大量帰国
タイでは今後高齢者の比率は益々高まり、労働者不足を補うための外国人労働者
への依存はより高まることになります。

しかしタイでは新型コロナの感染拡大、そしてそれに伴う工場閉鎖などから出稼ぎ労働者が
昨年大量解雇、解雇された労働者の殆どが母国に帰国しました。その後、政府により
外国人の入国が厳格化されたことで、出稼ぎ労働者の多くが現在もタイに戻ってきて
いません。更にオミクロン株の感染拡大により、タイ経済の本格的回復の時期が不透明
な中、既に50万人以上の労働力が不足しているとも言われています。

特にミャンマーやラオス、カンボジアなど近隣国からの出稼ぎ労働者への依存が高い
労働集約型の産業から不安の声が上がっています。

ミャンマーの政情不安も相当影響しています。

タイイで働く出稼ぎ労働者の約7割はミャンマー人が占めていますが、
ミャンマーの政情不安が続く中、ミャンマー人の出稼ぎ労働者が以前と同様に
タイに戻ってくるかは、???な状況。
タイに逃れてきた難民を労働力として活用しようという案はあるものの、
難民の多くは企業が求めるスキルとマッチしていない等、課題が多いのが現状です。

一方、ミャンマーに次いでタイへの出稼ぎ労働者が多いラオスやカンボジア。
中国主導の投資案件が急成長中で、タイから帰国した労働者の多くは、母国で就職先が
見つかるという理由で、再びタイに戻る労働者は減っています。
ラオス政府やカンボジア政府にとっても、自国の経済成長のため自国民の若い労働力を
確保したい意向で、タイへの出稼ぎ労働者は減少傾向にあります。

3.観光業の人材確保難
新型コロナで大打撃を受けたタイのホスピタリティ産業。
その代表格であるホテル業界は、新型コロナ後の本格的な観光回復を前に、
人手不足をどのように埋めるか既に頭を抱えているようです。

新型コロナで長らく不振が続くホテル業界を、就職先として選ぶ若年層は目に見えて
減少し続けています。弊社にも元ホスピタリティ産業の出身者やホスピタリティ学部卒の
方も数多く登録されていますが、
「もうホスピタリティ業界には戻りたくないです」と、皆さん口を揃えて業界を敬遠します。

以上、今後のタイの労働力不足に関し、3点にフォーカスしてみましたが如何でしょうか。

タイでの人手不足に関しては、当コラムでも何度もトピックとして挙げてきました。
コロナ禍を経て人材不足問題はますます顕在化しています。
在タイ日系企業にとっても、優秀な管理職人材、エンジニア、IT人材、
そして営業人材不足問題は、既に慢性化しています。

採用する企業側は、優秀な人材を「選ぶ採用」でなく「選ばれる採用」への
思考のシフト及び採用プロセスの転換が、今後より重要なテーマになっていくと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。(小野)

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