エコアズ・ウィークリー <2023年7月25日号>
おはようございます、小野です。
「その会社の詳しい福利厚生を教えていただけますか・・・?」
企業に応募する際に、ほとんどのタイ人が福利厚生を確認してきます。
団体医療保険や退職金積立制度(PVD)の加入有無、
有給休暇やその他の休暇制度等、、、
日本人責任者が採用窓口の場合、私から福利厚生に関し質問させていただくことがあります。
「え~っと、どうだったけ。。。ちょっと確認してみますね」と、日本人責任者の方が
自社の福利厚生制度を把握されていないことも意外と多いです。
応募を考えていた企業が、仮に団体医療保険に加入していない場合、
「え!?日系企業なのに医療保険に加入していないんですか・・・?」
というような感じで、団体医療保険に加入していないからという理由で、
その企業の応募を見送るタイ人の方もいます。
我々日本人からすれば、まずは行きたい企業に応募することが優先で、
福利厚生制度を理由に応募を見送るというのは殆どありえません。
日本人の感覚からすれば少し理解に苦しむ部分がありますが、ここはタイ。
これを理解するには、タイの社会保障制度を少し知っておく必要があります。
タイにも法定の社会保険制度(いわゆるSocial Security Fund/SSF)はあり、
5名以上の労働者を雇用している企業は、加入が義務付けられています。
SSFには健康保険、老齢年金、失業保険が含まれています。
「なんだ、タイにも社会保障制度がちゃんとあるんだ」と思いたいところですが、
例えば健康保険。国が指定した国立病院(及び一部の市立病院)リストから一つ
選べば、当該病院で無料或いは数十バーツで医療サービスを受けることができます。
しかし待ち時間が長いうえに、医療サービスは控えめに言っても標準レベルのものとは程遠く、
SSFホルダーとわかるやいなや、ぞんざいな扱いに変わるそう、、、^^;
所得が低いタイ人が行く病院というイメージもあり、日系企業に勤務するタイ人であれば、
殆どの方が「行きたくない」と、敬遠しています。
雇用保険や老齢年金は、そもそも給与月額最大THB15,000で計算されますので
年金額はSSFを20年以上払い続けてTHB3,000~4,000/月と超微々たるものです。
且つ財源に無理がありすぎるので制度の維持そのものも???です。
会社員として企業に就職すれば、「公的年金」「国民皆保険」「雇用保険」制度を、
世界でもトップクラスの医療保険等のサービスを、極めて低い自己負担で
当たり前のように受けることのできる日本で育った我々日本人とタイ人とでは、
そもそも感覚が全く違うんです。
最近は日本では「各保険料の引き上げ」「年金受給開始年齢の引き上げ」等が
議論され問題になっていますが、それでも日本をよく知るタイ人の方からすれば
「日本の社会保障制度は素晴らしい」のです。
話をタイに戻します。
国の社会保障制度の現状がこうなので、タイ人にとって入社する企業の
「福利厚生制度」は極めて重要な意味を持ってきます。
採用面接の際に日本人責任者に対し、福利厚生に関し直接質問する
タイ人求職者もいますが、 その際に面接官である日本人が自社の
福利厚生に対しての知識が殆どない場合、
「この会社はあまりスタッフの福利厚生のことを考えていないのかな・・・?」と
少なからずネガティブな印象を与えてしまいかねません。
団体医療保険の保証内容の中でも、特にOPDについては重要です。
(OPD(Outpatoent Department)=外来医療費)
OPDは簡単に説明すると風邪をひいて医者に通院した際に、保険から医療保険が
いくら負担されるというもの。
某大手保険会社の方によれば、一般社員に関してはTHB800~THB2,000のバーツ程度の
レンジに加入している企業が多いそうです(一番多いのが1,000~1,500バーツのレンジ)。
タイ人が通う私立病院であれば風邪程度であればTHB1,5000でおおよそカバーできると思います。
(これが日本人御用達のサミティベートやバムルンラードであれば足りません。。。)
以上、簡単でしたが今回のタイ人の福利厚生に対する考え方、いかがでしたでしょうか。
タイでタイ人と一緒に仕事を進めていくにおいて、このようなタイ人の考え方や背景が
あるということを、トップである日本人リーダーは(大まかで結構なので)知っておくべき
基本的事項だと思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。(小野)
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