ついに人口減少に転じるタイ、人材マーケットは?

エコアズ・ウィークリー <2022年5月31日号>

おはようございます、小野です。

先日タイ政府が、タイの人口のピークが2028年の6,719万人である見通しを発表しました。
翌2029年からは減少に転じるそうです。

2037年には人口に占める子どもの割合が14.3%まで低下する一方で、
高齢者の割合は29.9%まで高まる見込みだそうです。
ちなみに2040年の日本の高齢化率は36.1%、子供の割合は10.8%ともっと深刻です。

私が無知だっただけですが、この記事のことを知り、正直かなり驚きました^^;
タイが人口減に転じるのはもう少し後、2040年ぐらい?だと軽率に考えていたからです。

2037年の労働力需要は2017年の3,755万人から19.1%増の4,471万人に拡大する一方、
労働人口は10年ごとに300万人以上減少すると予測、自動システムの導入や
高齢社会対策が急務だとしています。

在タイ日系企業にとっては、今後の人材マーケットの動向が非常に気になるところです。

今回はタイ日系企業の今後の人材マーケットについて、人材側の視点から
お話させていただきたいと思います。それにあたって、まずはアジアの先進国である
香港や台湾の、「人材側から見た」日系企業の人材マーケットの変遷について
見ていきたいと思います。
※香港、台湾ともタイに先立ち、2020年から人口減に転じています。

▼香港
20年ほど前(2000年前後)、香港人にとって日系企業は憧れの就職先でした。

・給料、福利厚生が良い。
・日本式の働き方が学べる。

香港は経済成長をし続け、2014年には一人当たりGDPが日本を越えました。
その後も中国経済の高成長に相乗るかたちで、香港人の日系企業に対する人気は
徐々に低下していきました。

今では、、、
・日系企業の待遇はそこまで良くない。
・給料が上がらない。
・商慣行が古い、時代遅れな感じがする。 
・市場の変化に乗れない(あるいは乗らない)まま縮小、
今や人員削減など外的理由もあって魅力がない。 等々、、、

日本と日本人に対するイメージは良いものの、
日系企業で働くことに対しては、決して良いイメージを持たれていません。

▼台湾
2010年ぐらいまでは、台湾人にとって日系企業で勤務することは、
一つのステイタスでした。

・給料、福利厚生が良い。
・憧れの日系企業で日本人と一緒に仕事ができる。
・家族、親戚も喜んでくれる。

その後も台湾経済が成長し続けたのは、皆さんもご存じの通り。
今や日本の大手メーカーや金融機関が台湾企業に買収される時代です。

今では、、、
・別に日系企業にこだわらない。
・出来れば日本語を使いたいけど、台湾系企業でも日本語を使える職場は多いので
 それでも構わない(日系企業以上に日本語を活かせる職場が台湾には多数)。
・旅行で日本に行けるからOK!
 ※コロナ前は人口あたり約4人に1人が毎年日本に旅行へ行っています。

台湾の日系企業は、社員のほぼ全員が日本語を流暢に操り(最低でもN2)、
且つ能力・スキルも高い優秀な人材が豊富という世界的にも異常(?)な
市場です。加えて歴史的背景から「親日」ならぬ「愛日」である台湾人ですが、
今や日系企業で勤務することの関心はそこまで高くありません。

香港人と台湾人の日系企業に対するイメージの変遷、いかがでしょうか。

香港、台湾とも10年ほどの時差がありますが、「日系企業で働く」ことに対する
良きイメージが、徐々に薄れていっていることは共通しています。

ではタイの人材マーケットはどうなのでしょうか・・・?
タイの日系企業人材マーケットの今と将来について、香港と台湾の事例を参考に、
タイ日系人材マーケットの特性を踏まえた上で予測してみたいと思います。

今現在のタイ人の日系企業で勤務するイメージは、、、
・福利厚生が良い。
・技術が素晴らしい。
・日本人の働き方が学べる。
・家族的(←これはある意味タイ人独特の感性だと思います)。

もちろん少なからずネガティブな意見もありますが、タイ人の日系企業のイメージは
「今のところ」総じて高評価・好印象を保っています。

しかし今後タイ人の日系企業で働くことへのイメージは、アジアの先進国の
変遷から、下記の通り変わっていくのではないかと仮説を立てることができます。

・日系企業の待遇はそこまで良くない。
・給料が上がらない。
・商慣行が古い、時代遅れな感じがする。 
・旅行で日本に行けるからOK!
※お気づきの通り、そのまま香港人&台湾人の日系企業へのイメージを
 コピペしただけです。

実はローカル(英語)人材からは、既にこのような声を最近耳にすることが多くなり、
実際に多くの人材が、より厚遇な外資系や中華系の企業に流出しだしているのも事実です。
我々人材業界も然りです・・・(T_T)

ただしタイの場合、これは現状では英語人材に限った話になります
(十分に危機的ですが)。
外資系やタイ財閥系の企業は優秀で自社に必要な人材であれば、日系企業に勤務中の
人材に対し、30%~50%増しの給料をポンッと簡単に提示します。どうしても流出を防ぐ
には、最低でも外資系と同額以上の給与を提示するしかありません。

しかしこれをタイ人日本語人材にフォーカスすると、下記の理由より、当分人材が
大きく流出することは無いと予測できます(箇条書きですいません)。
・日本語学習者が非漢字圏では世界トップクラス(3位)。
・コロナの影響もあり日本語人材(N3以上)の供給が需要を上回っている。
・タイ人日本語人材は、日本語を活かす仕事につくのが最優先の方が多い。
・日本語を活かせる仕事が、日系企業以外だとタイの場合は限りなく選択肢が狭まる。
・仮に外資系企業に転職しても、雰囲気が合わず日系企業に戻る人材が多い。
・タイは日系企業進出数が他国に比べ圧倒的に多く、就職先の選択肢が豊富。
・日系企業数の頭打ち感のあるタイ、今後は日本語人材が供給過多になっていく。
・タイではまだまだ日系企業の給料・福利厚生は高水準をキープしている。
・タイ人にとって家族的な日系企業の雰囲気は居心地が良い。
等々、、、

思いつく限り挙げてみましたが、タイ人の日本語人材がタイローカルや外資系企業に
大量に流出していくということは、なかなか考えにくいということがおわかりいただけた
かと思います。

ジョブホッパーと言われるタイ人ですが、実はアジアの中華圏の方に比べると定着率は良く、
離職率は低い方です。また昨今のタイ経済の発展とともに「住宅」「自動車」「学費」等の
いわゆるローンを何十年単位で組んでいる20代~30代のタイ人も多くなり、以前のように
「気に入らなかったら即退職!」みたいな事例は極めて少なくなってきています。
(仮にそのようなタイ人スタッフが貴社に多い場合は、採用の段階でミスしているのか、
貴社の人材マネージメント方法を見直す必要があるかもしれません。。。)

「優秀な人材がなかなか採用できない」と嘆くよりも、
日本が好きで、日本語を学習し、日本語で接してくれる、非常に有り難い
目の間の人材とともに、時間をかけ共存共栄していくことが、これからの在タイ日系企業に
とって、実は一番大切なことなのかもしれません。

もしかしたらキーとなるのは「日本語人材」・・・?
とコラムを下記ながら自分なりの考えが整理されました。

如何でしょうか。
かなり独自の(というよりムチャな?)視点から、今後の在タイ日系企業の人材
マーケットのお話をさせていただきましたが、数ある意見の中の一つとして、
参考にしていただけましたら幸いです。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。(小野)

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