採用のポイント、部下に伝わっていますか・・・?

エコアズ・ウィークリー <2021年4月7日号>

おはようございます、小野です。

先日タイ人HR経由で、日系商社M社より日本人の求人依頼をいただきました。

▼求人内容は以下の通りでした。
職種:営業
仕事内容:記載なし
募集要項:25歳~35歳までの男女
     ○○業界の経験必須
     ビジネスレベルの英語 以上
     
あまりのシンプルな内容に弊社タイ人スタッフも疑問を感じ、より詳細の確認を試みましたが、
窓口のタイ人担当者は「これ以上はわからない。日本人上司は忙しいのでまず履歴書をください。」
と上司に何やら遠慮がちな感じで、M社のHR担当と日本人上司の間の壁を感じました。

最終的にM社のタイ人HRに確認をとった上で、私が日本人上司に直接連絡をしたところ、
実際には以下のような求人内容でした。ポイントだけ箇条書きしますと、、、

・新規プロジェクト始動による日本人採用。
・当該部署には現在日本人はいない。上司はタイ人になる。
・タイ国内および日本国内日系企業の窓口業務。イメージ的には営業事務。
・本人が営業活動をすることは基本的に無い。
・在庫・納期管理のためタイ国内の提携先工場での打ち合わせが毎週1回あり。
・当然タイ語は必須、英語ができれば欧米顧客との窓口もやってほしい。
・この業界での経験者はまずいないので、語学・人物重視で行きたい 
・優秀な人材であれば年齢は40代でも問題なし 等々、、、

違う企業の求人ではないか?と言っても大げさではないほど、M社の日本人上司と
タイ人HRのイメージは、全く違うものでした。

「タイ人HR経由で、求人を人材紹介会社にお願いしているんだけども、
なかなか良い人材の紹介が来ない、、、」貴社にはこのようなご経験はありませんか・・・?

基本的に組織及び社員の成長とともに、採用もタイ人スタッフにどんどん権限移譲し
任せていくべきだと思いますし、弊社も社員の採用活動は社員がおこなっています。
その際に落とし穴になりやすいのは、
「求人の内容及び意図が、タイ人社員に伝わっているようで伝わっていない」ということです。

日系企業の場合、求人のそもそもの出処は日本人であるケースが多いですが、例えば日本人上司の
人材採用条件の具体的イメージが100だとしても、それががタイ人HRに50しか伝わっていなければ
(或いは理解度が50%であれば)、その時点で既に大きなミスマッチが生じており、
我々人材紹介会社へも内容は当然最低でも50しか伝わってきません。

求人の内容は、
・ポジション
・年齢/性別
・募集背景(増員/退職補填/なぜ?)
・仕事内容(とにかくより細かく)
・募集セクションの組織(上司や同僚)
・当該ポジションに関して現在抱えている問題点
・性格的な部分等々、、、

挙げればキリがありませんが、採用を任せるタイ人HRは、
出来る限り細かいニュアンスまで把握しているに越したことはありません。

何年もの付き合いで、いわゆる阿吽の呼吸で信頼できるスタッフであれば別ですが、
そもそも母国語同士での会話でない時点で、こちらが伝わっているだろうと考えていても、
意外と伝わっていないものです。80伝わっていれば上出来かもしれませんが、やはり
採用においてはお互いのイメージが100に限りなく近いに越したことはありません。

部下の成長や会社の将来のためにも、タイ人社員にできる事は徐々に権限移譲し
いつまでも日本人上司が介入したり、かかわるべきではありませんが、
当然ですがこの権限委譲プロセスは一筋縄にはいきません。

▼採用におけるタイ人部下への権限移譲プロセスの初期は、例えばこんな感じです。
・まずは日本人上司が採用背景・条件等を可能な限り細かく「文書」で落とし込む。
・更にニュアンス的な部分を「口頭」でしっかり伝える。
・応募者「全員」の履歴書に目を通し対し、双方の感覚の擦り合せをおこなう。
・実際の面接で自分のイメージと採用担当者の感覚の擦り合せをおこなう。 等々、、、

従業員規模が100名であろうが10名であろうが、窓口のタイ人の採用担当者が
日本人上司(或いはタイ人上司)としっかりコミュニケーションがとれているか否かで、
貴社が優秀な人材を採用できるかという結果に、雲泥の差が出てきます。
今回のM社ようにタイ人社員に単なる「御用聞き」のような役割しか与えないと、担当者本人は
仕事にやりがいを感じることができませんし、採用の重要性も理解できないでしょう。

下記についてあらためて検証してみてください。

貴社採用担当HRは、
・求人の背景や意図を細かい部分まで理解していますか?
・仕事内容や条件の詳細を理解していますか?
・責任と使命感を持って採用活動に取り組んでいますか?
・理解が100%でない場合、上司に遠慮して質問することをためらっていませんか?

日本人採用責任者(上司)は、
・「タイ人部下はわかっているだろう、理解しているだろう」と上司側の思い込みがありませんか?
・タイ部下は単なる「御用聞き」になっていませんか?
・採用活動における部下とのコミュニケーションを採点するとすれば、100のうち何点ですか?

日本国内では、「日本人同士」「言葉に落とし込めば100%理解できる」ということで、
ここまでやる必要は無いのかもしれませんが、海外で採用活動する際には、
より良い人材を採用するためには、細かい部分まで相当気を配る必要があります。

タイ人HRに権限移譲中の企業の中には、
「そういう(権限委譲の)段階なので、何か不明点等あれば必ず私に直接連絡ください」と、
敢えて日本人採用責任者の方より、フォローの連絡をいただくこともありますが、企業の成長の段階で
必要なプロセスだと思いますし、このように日本人上司がタイ人部下を「背後からサポートしている」企業は、
実際に採用がうまくいくケースが多いのも事実です。

実は意外と見落としがちな、貴社の「採用力」を上げていくための重要ポイントでした。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。(小野)

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