だから言わんこっちゃない日本語人材 ~後編~

エコアズ・ウィークリー <2021年9月14日号>

おはようございます、小野です。

今週は前回に続き、「だから言わんこっちゃない日本語人材」~後編~をお届けいたします。
先週は現在マーケットに溢れている日本語人材の実態についてお話させていただきました。

リーマンショックの際も同様の事が起こり深刻でしたが、今回のコロナショックはその比ではありません。
蛇足ですが先週のBさん、2017年に転職を希望していた際に、
「ただ単に通訳の仕事を続けることへの将来性(=危険)」についてアドバイスしたのですが、
残念ながら彼女はより高い給与を求め、50,000バーツのオファーで別の企業に転職していきました。。。

※Bさんの給与変遷
     Bさん
2011年  27,000
2016年  41,000
2019年  66,000
2021年  18,000

ところで、先日あるタイ人N2の通訳人材のCさんと面接しました。
Cさん「通訳のままでは将来心配なので、営業職に変わりたいです!」

小野「その考え、すごく良いと思います!!でもCさんは営業の経験が全く無いから、
営業職に変わったら給料はバーツ27,000ぐらいになりますよ。覚悟はありますか・・・?」

Cさん「え・・・それは厳しいです、、、^^;」

現在の給料は40,000バーツだったCさんは、職種転換を諦めました。
Cさんの気持ちはものすごくわかります。

わかりやすく例えれば、40万円だった給料が転職して27万円に下がるとしたら
敢えて転職するでしょうか・・・?よほど高い目標や覚悟がない限りは無理でしょう。

一方で、80,000バーツだった給料を43,000バーツまで下げて、
昨年総務人事職に転身した通訳人材Dさんのような方もいます。

Dさんは30代後半の女性で、これまでの経験はほぼ通訳。
ここまで給与を下げ転職する方は極稀(全体の1%未満)、
家族の理解も含め相当の覚悟がないと転職は無理でしょう。

「こんなに給料下がって、この人は本当に大丈夫なんでしょうか・・・?」
当然採用する企業としても、かなりの勇気と覚悟を持ってDさんを採用されたはずです。

そのDさんですが、現在は転職先の企業でかなり充実した日々を送っているようです。
「今の仕事は本当にやり甲斐があって楽しく、満足しています。」
おそらくDさんが通訳専業職に戻ることはないでしょう。

日本語人材の将来のキャリアのために、我々日系企業が取り組みが
出来ること(或いはすべきこと)があるとすれば、どのようなことでしょうか・・・?

企業は日本語人材を採用する際、もちろん最初は通訳のみの職務でも良いのですが、
「通訳+生産管理」「通訳+貿易実務」「通訳+営業」など、スタッフの適性を見つつ、
本人のためにもそして貴社の組織力のアップのためにも、プラスアルファの職務を与えることが
今後はますます必要になってくると思います。

さもなければ今回のような有事に、「30代以上の日本語が上手なだけの人材」が、
再び市場に溢れてしまうことになります。

東南アジア・中国・北米で駐在員を歴任されたMさんから、先日たまたま人材マネージメントに
関し話を聞く機会がありましたが、その中でMさんの以下の言葉は心に刺さりました。
「これまで様々な国で通訳の方を採用してきましたが、私は通訳の方を単なる通訳としてでなく
<パートナー>として考えてきました。彼女たちは私の一番の理解者であるとともに、
海外で私自身が裸の王様にならないよう、時に遠慮なく私に意見を言ってくれる頼もしい存在でした。」

ある国では、Mさんのもとで通訳から工場長にまで昇格された人材もいたそうです。

世界中の日系企業にとって貴重な日本語人材。
世界中の日本語人材が、ただ単に「日本語が話せるだけ」の人材で溢れてしまうことを
想像すると、ゾッとします。。。

これは日系企業全体の人材レベルの低下に繋がることですし、今後日系企業が全体で
中長期的に取り組んでいくべき課題だと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。(小野)

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