N3が日本語人材でなくなる日

エコアズ・ウィークリー <2021年4月27日号>

おはようございます、小野です。

4月22日(木)に開催されました多田国際社会保険労務士事務所主催のタイ労務に関する
オンライン無料セミナー、60社以上の企業の皆様にご参加いただき大変ご好評いただきました。

アンケートにもしっかり目を通させていただきました、数々の貴重なご意見ありがとうございました。
この場を借りて改めて御礼申し上げます。

スケジュールのご都合で当日残念ながらご参加いただけなかった皆様のために、
後日動画を公開させていただく予定ですので今しばらくお待ち下さい。

さて本題です。

先日セミナーでもお話させていただいたのですが、現在のタイの状況を鑑みると
タイの日系企業の転職マーケットは、求職者にとって今後も当分厳しい状況が続くことが予測されます。

日本語人材においても然り、いやローカル人材以上に厳しいかもしれません。
日本語人材の中でも特に、新卒の方々や30歳以上で通訳「のみ」の経験しかない日本語人材は
本当に厳しい状況です。N3通訳人材は年令問わず、給料を下げて職種転換しないと就職先が見つかりません。
中には日系企業をあきらめローカル企業に就職する方も、、、

日本語人材は、少なからず何らかの通訳経験を経て、25歳から30歳ぐらいまでに
それぞれ専門分野(人事/総務/営業/経理等)に進むのが一般的で、大学卒業後に最初から
専門分野に進む方の方がむしろ稀です。

しかし30歳を超えても通訳のみの経験しかなく、それから他の職種に転身というのは難しいのが現状で、
いま特に就職難にあえいでいるのはまさにこのカテゴリーの人材です。

加えて通訳人材には「日本語プレミアム=いわゆる日本語手当」が付くので1,000バーツから
最高で30,000バーツ以上、タイ人ローカル人材に比べ、これまで給与は高騰し続けていました。

この日本語プレミアムにより、新卒で「日本語スキルのみ」で給与が他の新卒スタッフの倍になるケースもあります。
ちなみにフィリピンやインドネシア等のASEAN諸国も同じ傾向があり、東南アジア独特の傾向といえます。

語学力だけで新卒の給料が倍というのは日本ではありえません。
同じく中国や台湾、韓国などでは日本語による給与の開きは殆どなく、加えてこれらの国では
「N3」の方は履歴書に恥ずかしくて記載しません。
日本語人材を名乗るには最低でも「N2」、「N2」でも流暢でないという考えが一般的です。

コロナ前は引く手あまただったタイの日本語人材、
経験豊富で優秀な人材ですら、今は一旦退職してしまうと厳しい状況です。

給与THB75,000からTHB50,000に下がったN2の営業マネージャー、
THB60,000からTHB45,000に下がったN3の人事マネージャー、
二人とも給与25%ダウンです。

このような例は最近は珍しくありません。

新卒人材はN3の希望給与相場は2019年はTHB20,000~THB25,0000が一般的でしたが、
今はTHB18,000~、新卒N2人材は2019年は23,000~30,000バーツ希望が一般的でしたが、
今は20,000~25,000バーツまで希望給与下がっています。

タイの日本語スピーカー人材の就職マーケットは当分供給過剰の状況が続く見通しです。
そういう意味においては、若手日本語人材の採用を検討中の企業様にとっては、
「ポテンシャルある優秀な日本語スピーカー人材を、通常の給与よりかなり抑えて採用できる」
絶好の機会であるとも言えます。

ただ採用する際は、通訳という職種に特化せず、仮に通訳がメインだとしても
「通訳+生産管理」「通訳+貿易実務」「通訳+営業」など、もちろん最初は通訳のみでも良いのですが、
スタッフの適性を見つつ、本人のためにもそして貴社の組織力のアップのためにも、プラスアルファの
職務を与えることが今後はますます必要になってくると思います。

でないと今回のような有事に、「30代以上の日本語が上手なだけの人材」が再び市場に溢れてしまう
ことになります。これは日系企業全体の人材レベルの低下に繋がることですし、今後日系企業が全体で
中長期的に取り組んでいくべき課題だと思います。

このまま日本語人材の需要減や給与レベルの低下・調整が長期化すると
将来タイも、中国・台湾・韓国のように「N3は日本語人材ではない」という日が来るかもしれません。

皆様はこのトピック、どのように思われますでしょうか。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。(小野)

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