2人の日本語人材の給料変遷12年<後編>

エコアズ・ウィークリー <2023年2月28日号>

おはようございます、小野です。

今週は前回に続き、「2人の日本語人材の給料変遷12年」~後編~をお届けいたします。
先週は、ある日本語人材2名(AさんとBさん)の給料変遷及び、コロナによって供給過多
となった日本語人材の実態についてお話させていただきました。

リーマンショックの際も同様の事が起こり深刻でしたが、直近のコロナショックはその比では
ありませんでした。蛇足ですが先週のBさん、2017年に転職を希望していた際に、
「ただ単に通訳の仕事を続けることへの将来性(≒危険性)」についてアドバイスしたのですが、
残念ながら彼女はより高い給与を求め、50,000バーツのオファーで別の企業に転職していきました。。。

※参考までに、AさんとBさんの給与変遷を再度掲載します。
     Aさん      Bさん
2011年  16,000     27,000
2016年  27,000     41,000
2019年  40,000     66,000
2021年  45,000     18,000
2023年  51,000     30,000前後

ところで、先週プラチンブリ在住のタイ人N2の通訳人材のTさんのを面接しました。
Tさん「通訳のままではスキルがつかないので、営業職に変わりたいです!」

小野「その考え、すごく良いと思います!!でもTさんは営業の経験が全く無いから、
営業職に変わったら給料は30,000バーツぐらい、良くてもMAXTHB35,000ぐらい。
実際にTHB35,000というのは、かなり厳しいと思いますよ。それでも大丈夫ですか・・・?」

Tさん「え・・・流石にそんなことは無いでしょう、、、^^;」

26歳で現在の給料が45,000バーツ(+ボーナス3ヶ月分)のTさんは、
最初はポカンとした様子で、私の話の意味がよく理解できていないようでした。
Tさんへ現状を詳しく説明した後、最終的に彼は職種転換を諦めました。
Tさんの気持ちはものすごくわかります。

わかりやすく例えれば、45万円だった給料が転職して30万円に下がるとしたら
敢えて転職するでしょうか・・・?よほど就職先の会社での高い目標や動機、
覚悟がない限りは無理でしょう。

一方で、80,000バーツだった給料を43,000バーツまで下げて、
新規立ち上げ企業の総務人事職に転身した通訳人材Dさんのような方もいます。

Dさんは30代後半の女性で、これまでの経験はほぼ通訳。
ここまで給与を下げ転職する方は極稀(全体の1%未満)、
家族の理解も含め相当の覚悟がないと転職は無理でしょう。

「こんなに給料が下がって、この方は本当に大丈夫なんでしょうか・・・?」
当然採用する企業としても、かなりの勇気と覚悟を持ってDさんを採用されたはずです。

そのDさんですが、現在は転職先の企業でかなり充実した日々を送っているようです。
「今の仕事は本当にやり甲斐があって楽しく、満足しています。」

明るく積極的で勉強熱心なDさんは、入社後の勤務先からの評価も非常に良いものでした。
おそらくDさんが通訳専業職に戻ることはないでしょう。

日本語人材の将来のキャリアのために、我々日系企業が取り組みが
出来ること(或いはすべきこと)があるとすれば、どのようなことでしょうか・・・?

企業は日本語人材を採用する際、もちろん最初は通訳のみの職務でも良いのですが、
「通訳+生産管理」「通訳+貿易実務」「通訳+営業」など、スタッフの適性を見つつ、
本人のためにもそして貴社の組織力の底上げのためにも、プラスアルファの職務を与えることが
今後はますます重要且つ必要になってくると思います。

さもなければ今回のような有事に、「30代以上の日本語が上手なだけの人材」が、
再び市場に溢れてしまうことになります。

東南アジア・中国・北米で駐在員を歴任されたMさんから、人材マネージメントに
関し話を聞く機会がありましたが、その中でMさんの以下の言葉は、非常に印象に残りました。
「これまで様々な国で通訳の方を採用してきましたが、私は通訳の方を単なる通訳としてでなく
<パートナー>として考えてきました。彼女たちは私の一番の理解者であるとともに、
海外で私自身が裸の王様にならないよう、時に遠慮なく私に意見を言ってくれる頼もしい
存在でした。」

ある国では、Mさんのもとで通訳から工場長にまで昇格された人材もいたそうです。

世界中の日系企業にとって貴重な日本語人材。
世界中の日本語人材が、スキルが無い「日本語が話せるだけ」の人材で溢れてしまうことを
想像すると、ゾッとします。。。大きすぎる機会損失です。

これは日系企業全体の人材レベルの低下に繋がることですし、今後も日系企業が全体で
中長期的に取り組んでいくべき課題だと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。(小野)

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